2008年版春の摘草読書録-その4-リチャード・フロリダ「クリエイティブ・クラスの起源」
写真は”The Rise of the Creative Class”
日本では現在地域格差が問題となっている。地域によって格差が生ずるのは何の理由によるのだろうか。この解については色々な識者の意見がある。従来の産業資本に対して、地域のソーシャル・キャピタル(social capital)、ヒューマン・キャピタル(Human capital)の重要性を説く向きもある。
米国の社会学者のリチャード・フロリダ(Richard Florida)は人間の創造性に注目し、クリエイティブ・クラス(creative class )の概念を提唱し、その体系化と実証研究を行っている。実証研究では主に米国の都市間の比較研究を行っており、地域の振興の力となるクリエイティブ・クラスの姿を明示した。
フロリダはクリエイティブ・クラスの定義として
クリエイティブの中核
・コンピュータや数学の専門家
・建築家と工学エンジニア
・生命科学、物理学、社会学の研究者
・教育、訓練、図書の専門家
・芸術、デザイン、娯楽、スポーツ、そしてメディアの専門家
創造的な専門家
・経営専門家
・ビジネスと財務の専門家
・法律家
・医療・健康の専門家
・高級品志向のセールスマンとそのマネージャー
に携わるし人々と定義している。
(*)
次に、フロリダは地域のクリエイティビティを測る指標として、技術(Technology)、才能(Talent),許容性(Tolerance)の三つのTを挙げている。その他の指標としてはボヘミアン指標(Bohemian Index)やゲイ指標(Gay Index)が挙げられていることだ。後者の指標は我々日本人ではぴんと来ないが欧米社会でのクリエイティビティを考察する際に強力な指標となるようだ。
前者の三つについては明らかにクリエイティビティの指標として顕著であるが、後者の二つの有意性は検討の余地がありそうだ。ボヘミアン指数にみられるようにクリエイティビティをフローな資本としてみている点は注目される。従来の人的資本がストックな資本と見ていたのに対して流動的であることの重要性に注目しているといえる。頭脳流出という言葉があるように、創造性を持った人間が移動することはその地域の振興に大きな影響を与える。現在の日本における地域格差は一面、創造性格差といった面から考察することは重要である。
この本の中で紹介されているように米国では新しい仕事感、労働観を持った人々がニューエコノミー以降社会に進出している。ダニエル・ピンク(Daniel H. Pink)の「フリーエージェント社会の到来」デそしてディビッド・ブルックス(David Brooks)の「Bobos in paradise )」といった本がその人々のライフスタイルと価値観を伝えている。またICTの分野で働く人々の新しい価値観及び社会像にについては、フィンランドの社会学者のヒマネンが「リナックスの革命」がこれを伝えている。
ここで伝えられるフリーエージェントやボボスは未来の明るい仕事像を現しているようだが、三浦展の「下流社会」のように現実においてはさまざまな格差などの問題があるのは日本でもご承知の通りである。
注
(*)Florida[2004]p328
参考文献
(1)Florida, Richard [2004]"The Rise of the Creative Class : And How It's Transforming Work, Leisure, Community and Everyday Life":Basic Books
(2)ダニエル・ピンク、 池村千秋訳[2002]「フリーエージェント社会の到来 : 「雇われない生き方」は何を変えるか」ダイヤモンド社
(3)David Brooks. [2000]”Bobos in paradise : the new upper class and how they got there” Simon & Schuster.
(4)Himanen, Pekka;Torvalds, Linus;Castells, Manuel[ 2001]” Hacker Ethic : A Radical Approach to the Philosophy of Business”:Random House (安原和見、山形浩生訳[2001]「リナックスの革命―ハッカー倫理とネット社会の精神 」河出書房新社 )
(5)三浦展[2005]「下流社会―新たな階層集団の出現」光文社新書


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