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January 15, 2009

2008年版冬の炬燵の読書録-その41-ルドルフ・キッペンハーン「暗号攻防史」

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写真は「暗号攻防史」
長いシリーズのものの映画「007」は英国の秘密諜報員(シークレットエージェント)を主人公にしたものである。画面でのジェームス・ボンドの華々しい活躍に比べて、実際の諜報活動(インテリジェンス)は地味なものらしい.その基本は毎日の各新聞の切り抜きだそうだ.潜入活動のような手もかかり危険も伴なう諜報活動もないことはないらしい。さて、いろいろな手段で得た情報を敵の目をかいくぐって味方に知らせるのも重要な事となる.孫子の兵法「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」(謀攻篇)は洋の東西を問わず鉄則のようだ.暗号についてもシリーズの代表作といわれる「ロシアより愛をこめて」は暗号解読機の争奪戦から展開していた.
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写真は「ロシアより愛をこめて」
ルドルフ・キッペンハーンの「暗号攻防史」は暗号の歴史を教えてくれる.この本の存在は、大学院での特別講座で「情報セキュリティ」に関するものがあり、苗村憲司先生に紹介いただいた.著者のルドルフ・キッペンハーンは本の著者紹介によれば、1926年生まれで大学で数学と物理学を学び、のちに天文学に転じたとある.ゲッチンゲン大学教授、マックス・プランク学術協会天体物理学研究所所長を経て、退官後は著作活動に専念とある.
欧米ではこのような専門分野で活躍したが、現役引退後一般向けに素晴らしい本を出すことが多いようだ.解説によればキッペンハーン氏は暗号についての研究はいわば余技だそうだが、余技でこれほどの本が書けることには驚きを感ずる.
またその専門分野のみならず該博な知識に圧倒されることが多い.日本の研究者でももっとそういうことが出来る人が出て欲しいと思うのだがいかがであろうか.原題はドイツ語で”Verschlusselte Botschaften”である。赤根洋子氏の訳は丁寧で、かつよくこなれており十分原著の面白さを味あわせてくれる.
暗号の歴史は文字の歴史と同じくらい古い」ということも文字が本来発信者が受信者に何らかのメッセージを伝えることを目的とするなら、当然受信者を特定することとなりこのことは即暗号化の要求に繋がることになりそうだ。歴史的な幾つかのエピソードが語られているが、米国の大統領でもあったトーマス・ジェファーソンが暗号の発明家だったというから驚きである。ジェファーソンは米国の大統領の中でも大変興味深い人物である事は事実だ.ベンジャミン・フランクリン同様、科学や技術に興味を持ち研究を続けていたというから暗号研究をしていたということもうなずける。ジェファーソンの開発した暗号器「ジェファーソンの輪(ホイール)」はなんでも第二次世界大戦まで使われていたそうだ.第二次世界大戦といえば日本軍の暗号が既に開戦以前に米国で解読されていたとされる。(*)
またミステリーファンにとっても暗号はお馴染みだが、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」、シャーロック・ホームズの「踊る人形」はご存知のとおりである。何でもポーは暗号を趣味にしていたそうで、1839年には、ある雑誌記事の中で、単一換字式で暗号文を書いて送ってほしいと依頼し、その結果彼のもとに続々と暗号文が寄せられることになった。ポーはそれらの暗号文を大半解読し、暗号解読の天才という名声を得たそうである。そのための解読法は秘密にしていたが、後にこれらの知識をいかして書いたのが「黄金虫」だそうだ。ポーの「黄金虫」もドイルの「踊る人形」もいずれも単一換字式暗号で同じ原則(文字の登場頻度)によって解読される。英語やドイツ語の場合、文字の登場頻度については8文字”a sin to er(r)(過ちを犯す罪)”ということが言えるそうだ。(**)特に”e”は頻度が多く、この文字を発見することによって紐解いていくといったことが行われる。また、単語についても頻度の多い単語、英語ではthe,of,and,to,a.in,that,is,Iと続き、ドイツ語ではdie,der,zu,in,ein,an,den,auf,dasとなるそうだ。

(この稿未完)


(*)辻井[1999]pp99-103
(**)キッペンハーン、赤根訳[2001]p12

参考文献
(1)ルドルフ・キッペンハーン、赤根洋子訳[2001]「暗号攻防史」文春文庫
(2)辻井重男[1999]「暗号と情報社会」文春新書
(3)名和小太郎[2005]「情報セキュリティ―理念と歴史」みすず書房
(4)イアン・フレミング, 井上一夫訳[2008]「007/ロシアから愛をこめて」創元推理文庫

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